日本語教師を国家資格へ
公明新聞に「伊藤たかえ」の記事が掲載されました。
■外国人住民は過去最多に
言語習得は生活向上の基盤
日本で暮らす外国人住民は昨年6月末で約296万人に達し、過去最多となった。外国人住民の日本語学習者も2019年には過去最高の約28万人となっており、今後も拡大が見込まれる。外国人が、地域や職場で孤立することなく、また意思疎通の不十分さが招くトラブルを防ぐには、一定の日本語能力が不可欠だ。
こうした中、日本語教師などの指導者は、約4万人前後の横ばい傾向が続き、また、それらの約5割以上をボランティアが務めるなど、日本語の指導体制は質・量ともに課題が多い。
出入国在留管理庁が日本に住む外国人を対象に行った調査では、日本語能力が高いほど生活環境全般の満足度が高かった。それにもかかわらず、日本語を学ぶ環境は整っていない。
日本語教育機関が無い市区町村は21年度に全自治体の46%となっており、専門性を有する日本語教師や日本語学習支援者などの人材確保へ財政支援を求める声が多くの自治体などから上がっている。事実、公立学校における日本語指導が必要な児童生徒は10年間で1.8倍増えている。
19年に公明党などの推進で成立した「日本語教育推進法」は、外国人への日本語教育を国や自治体の責務としている。希望する人が円滑に学べるようにすることは、外国人を受け入れる上で不可欠な基盤だ。
■国による教育機関認定
政府、今国会に法案提出
こうした中、日本に住む外国人への日本語教育の充実を促す「日本語教育推進法」が定める、日本語教師の資格整備について、政府は文化庁に新制度を運営するための推進室を設置して準備を本格化させる。
新制度では、教育課程や教員、施設設備など国の一定の基準を満たした日本語教育機関を文科相が認定。
国は、認定機関の情報を多言語でインターネットなどで公表し、国内外の学習者らが機関を選べるような環境を整備する。
認定機関で教えるには、「登録日本語教員」になることが必要だ。国家資格として位置付け、知識や技能について国が行う試験に合格し、教育実習を修了する必要がある。
試験は基礎的な知識や技能を問う試験と、分野横断的な応用力や外国人への具体的な指導法を問う2種類の試験からなる。両方の試験に合格後、外国人に日本語を教える教育実習を行う。試験は年に1回以上実施する。
新たな認定制度には十分な移行期間を設定し、一定の要件を満たす現職の日本語教師らには筆記試験や教育実習の免除を含めた経過措置を設けるとした。
認定されないと日本語教育ができないわけではないが、在留資格の「留学」によって来日する生徒を教えるにはこの資格が必要となる。現在、留学生を受け入れるための日本語学校については法務省の基準があり、そこで働く教員にも一応の要件がある。ただ、教育的な観点からの質が十分でないとの指摘もある。
地域の日本語教育をボランティアが支えているケースも多い現状を踏まえ、素案では、引き続き「地域のボランティアなどが運営する日本語教室によって多様な学習機会が提供されることは重要」とした。
■公明、文科相に繰り返し訴え
日本語教育の充実に向け永岡文科相(左から5人目)に提言を申し入れる党推進本部=22年12月 文科省
公明党教育改革推進本部(本部長=浮島智子衆院議員)などはこれまで、日本語教師の国家資格化を繰り返し訴え続けてきた。昨年12月には永岡桂子文科相に対し、日本語教師の国家資格化など日本語教育の充実に向けた提言を申し入れている。
提言では、日本に居住する外国人の日本語学習者が2019年に約28万人と過去最高を記録し、今後も拡大が見込まれる状況を踏まえ、「指導体制は非常に厳しい状況にある」と訴えた。
その上で、日本語教師の待遇改善や社会的地位の確立をめざし、国家資格化を改めて提唱。教育機関に関しては、質の維持・向上を図るため、適格性を評価する新たな認定制度の創設や日本語教育の空白地域の解消などを求めた。