ヤングケアラー 皆で支えたい

公明新聞に「伊藤たかえ」の記事が掲載されました。

 

党島根県本部女性局 パネルディスカッションから

公明党島根県本部女性局(局長=岡崎綾子県議)は8月10日、「しまねハートフルフォーラム」を出雲市内で開催。日常的に家族の世話や介護を担う子ども「ヤングケアラー」をテーマに、パネルディスカッションなどを行いました。現状や支援のポイントに関する発言要旨を紹介します。

「コネクトほーむ」代表 井上恵理子氏
寄り添い話を聴くのが重要

「コネクトほーむ」代表 井上恵理子氏

小学生の頃に寝たきり状態になった祖父を支え、20歳を過ぎてから今度は両親に介護が必要な状況になり、約4年前に介護との両立が難しくなり仕事を辞めました。そうした体験から、ヤングケアラーが悩みを打ち明けられる居場所「コネクトほーむ」を5月に開設しました。

ヤングケアラーの発見が難しいのは、子どもたちが自身を当事者と認識していなかったり、逆に隠したいと思って人に言わなかったりするのが大きな要因だと感じています。

支援で重要なのは、「押し付け」ではなく、「寄り添い」です。アドバイスをもらっても、家族が支援を受け入れる気持ちになれない、もしくは反発してしまうこともあります。まずは寄り添って話を聴き、そこから個々人に合う支援や相談につなげていくのが良いと思います。自分のことは後回しにしてきた当事者は、自分の道を選んだり、考える時間もなかったりするため、自己肯定感を高めるサポートも必要です。

「声の掛け方に悩む」といった声をお聞きしますが、正解、不正解はありません。強いて言えば、例えば、「よく頑張ってるね」の後に、「困っていることがあったら言うんだよ」などの一言があると、いざというときに悩みを打ち明けやすくなると思います。声を掛け続けることが大切です。

一番伝えたいのは、ヤングケアラーを決して“かわいそう”という目で見てほしくないということ。周りがかわいそうな子と思うと、それが伝わり閉じ込もってしまいます。

「おおた社会福祉士事務所」代表 太田桂子氏
チーム学校で保護者支援を

「おおた社会福祉士事務所」代表 太田桂子氏

島根大学医学部付属病院などで看護師を経て、2021年9月に社会福祉士事務所を設立。23年度より、出雲市教育委員会などからの派遣型のスクールソーシャルワーカー(SSW)として、同市の小中高校を担当しています。

SSWは、児童がなぜ今こういう状況にあるのか、家族や学校、地域などの生活環境を分析して調整を行い、課題解決を支援します。

学校でヤングケアラーの子と関わることもあります。例えば、中学1年生の子が部活をすぐ辞めてしまった時に、担任の先生は「病気がちな一人親のお母さんが関係あるのかな」と推測します。次の一手に悩んだところで、学校側から私たちに連絡が入ります。担任から学年主任、教頭、校長につないでもらい、SSWも含め“チーム学校”で支援することが重要です。

特にヤングケアラーの問題は、子どもだけに働き掛けていても解決できません。保護者支援が非常に大事です。しかし、担任に家庭の事情を話すのは少なからず抵抗があるでしょう。だからこそ、第三者の私たちが保護者との面談を通して、家族の関係性や価値観などを聴きながら、その子が置かれている背景を見ます。そこから一番気掛かりな点を浮き彫りにし、取っ掛かりを考えていきます。

保護者が困ったときに相談できる人の数が多いほど、子どもが楽しい気持ちで毎日を過ごせることが分かってきました。担任や養護教諭をはじめ、SSWがその一翼を担い、保護者を孤立させないことが大切です。

 

参院議員 伊藤孝江氏
地域で気付き、サポートへ

参院議員 伊藤孝江氏

 

ヤングケアラーについて、6月施行の改正子ども・若者育成支援推進法で、国や自治体が支援すべき対象として明文化されました。

支援を巡って、私は21年3月の参院予算委員会で支援強化を主張。菅義偉首相(当時)が「省庁横断で支援に取り組む」と答弁したことが追い風となり、厚生労働・文部科学両省の合同プロジェクトチームが設置され、省庁の垣根を越えて支援体制が強化されることとなりました。

その後も、地域による支援のばらつきを解消するため、実態調査や支援策の推進など、党を挙げて継続的に取り組んでいます。

議員の立場で予算を組み、事業を実現するのは当然必要ですが、補えない部分もあります。そうした部分を、地域で気付きサポートしていただくことも重要です。誰一人取り残さない社会を一緒につくっていきましょう!

 

県女性局長・県議 岡崎綾子氏
正しい認識を知ってほしい

県女性局長・県議 岡崎綾子氏

 

議員になる前は高校の教員を12年間務めていました。担当を持つ中で、家庭で虐待が起きている、障がいのある家族の世話をしているといった環境に置かれている子どもがいました。そうした背景もあり、提出物がなかなか出てこない、服装がシワシワで乱れている子もいます。教員として声を掛けて話を聴き、励ますことはできますが、その家庭までは変えられない、もどかしい経験をしました。

島根県内のヤングケアラーは、県の実態調査によると、推計約1000人を超えます。ただ、自身を当事者と認識していない場合が多い上、周囲の大人も深刻な状況に気付きにくく、素通りしてしまう現状にあります。ヤングケアラーの正しい認識を大人にも知ってもらい、子どもが相談できる体制の整備も必要です。子どもの笑顔が輝く社会を築けるよう全力を挙げます。