【てい談】 法テラス〝悩み〟解決へ活躍

公明新聞に「伊藤たかえ」の記事が掲載されました。

「総合法律支援法」成立から20年
法テラス理事長 丸島俊介×党青年委員長、衆院議員 国重徹×党法務部会長代理、参院議員 伊藤孝江

日本司法支援センター(法テラス(メモ))を設置する「総合法律支援法」が2004年5月に成立してから20年。法テラスは06年10月の業務開始以来、国民の“悩み”に寄り添い、問題解決に向け活躍しています。法テラスの丸島俊介理事長と、公明党で弁護士出身の国重徹・青年委員長(衆院議員)、伊藤孝江・法務部会長代理(参院議員)が意義などを語り合いました。

法テラス
国の全額出資で設立された公的機関で、トラブル解決へ、電話・メール・対面での情報提供をはじめ、経済的に余裕のない人のために無料の法律相談や弁護士・司法書士費用などを立て替える「民事法律扶助」を実施している。国選弁護人に関する業務や犯罪被害者支援、法律家が少ない「司法過疎地」に事務所を設けて常駐のスタッフ弁護士を勤務させる取り組みも行う。現在、全国に103カ所の事務所があり、2023年度の無料法律相談の実施件数は31万件(速報値)を超す。

■司法と福祉の連携に期待(丸島)
■公明、創設時から一貫推進(国重)

伊藤 丸島理事長は、1999年に政府の司法制度改革審議会の主任専門調査員となり、法テラス創設の議論から携わってこられました。

国重 当時は、民間の法律扶助協会が、国の補助を受けながら、経済的に厳しい人へ裁判費用の立て替えなどの民事法律扶助を行っていました。しかし、事業は法制化されておらず、予算も非常に限られていた状態だったと伺っています。

丸島 その通りです。国民に司法の“敷居”は高かったのが実態でした。国民が利用しやすい司法サービスの実現を求めて、90年代から司法制度改革が議論されるようになりました。

私は諸外国の法律扶助制度を調べましたが、印象的だったのは米国・ニューヨーク市の貧民街に設けられた公設弁護士事務所の光景です。弁護士が福祉・雇用などの専門家と連携し、貧困から罪を犯した人の更生と生活再建へ包括的に支援していました。社会から疎外されたあらゆる人の尊厳を守ろうとする姿に「日本ではまだ遠い光景かもしれないが、いつか実現したい」と思いました。

伊藤 そうした調査報告を参考に日本の司法制度改革が実施され、その柱の一つとして結実したのが、法テラスですね。

国重 憲法や法律で権利を定めていても、それを実現するための法的支援が受けられなければ、権利は絵に描いた餅になります。だからこそ公明党は誰もが利用しやすい司法サービスの実現に尽力してきました。87年には故・冬柴鉄三衆院議員が法律扶助制度を国の責務として位置付ける独自の法案を発表。国会でも先輩議員が粘り強く取り上げ、2000年に初めて国の責務を明記した民事法律扶助法を制定できました。これが、さらに発展し、法テラスの創設につながっています。

丸島 公明党が後押ししてくれ、司法制度改革や法テラスの創設につながったことは、よく理解しています。

■110万人の署名を政府に届け後押し

伊藤 私も弁護士時代、受任した事件で法テラスを利用したことが数多くあります。困難を抱えた人に司法による解決の選択肢を示し、人生を前向きに考えられるようにできたのは大きいと思います。

国重 法的トラブルに巻き込まれやすい青年世代にも法テラスの支援は重要です。公明党青年局は、若者への法的支援を充実させるため、05年に110万人の署名を政府に提出するなど、取り組みを後押ししました。

丸島 若者は、消費契約の問題や職場のパワハラ問題などを抱えがちですが、利用者数は他の年齢層に比べてまだ少数です。利用を促すため法テラスは、若者向けの動画投稿サイトなどで広報に力を入れています。

伊藤 若者だけでなく弱い立場にある人が気軽に相談できることが大事です。法テラスは、その体制を整えてきました。16年に総合法律支援法を改正し、高齢者・障がい者への訪問相談や、資力にかかわらずDV(配偶者らによる暴力)・児童虐待の被害者が、いち早く法律相談できるようになったのは、その一例ですね。

丸島 はい。社会の課題と向き合い、業務を拡大させてきました。その中で「司法と福祉の連携」が生まれています。

九州のある離島では、高齢者の多くが権利侵害のリスクにさらされている実態を踏まえ、法テラスのスタッフ弁護士が島内の福祉関係者と連携して支援に乗り出し、成年後見制度の受け皿となる権利擁護センターを設立したケースもあります。こうした取り組みが、今後、発展していくことを期待します。

 

■被災者に無料の法律相談(丸島)
■ひとり親世帯の負担軽く(伊藤)

国重 近年、災害が激甚化し、さまざまな法的問題に直面する被災者も多くいます。私も弁護士時代、東日本大震災の発災直後、少しでも被災者の力になりたいと福島県へ法律相談に赴きました。相談を通じて被災者が安心される姿が、今も心に強く残っています。

丸島 東日本大震災では特例法により12年4月から、被災者の資力にかかわらず法テラスで無料の法律相談ができるようになりました。ここで培った経験は、その後の被災者を支える取り組みに役立っています。

国重 16年5月に公明党が推進した法改正により、大規模災害における資力を問わない法テラスの無料法律相談が恒久化されました。熊本地震から適用され、多くの被災者の生活再建に貢献していると伺っています。

伊藤 今年1月に発生した能登半島地震でも法テラスは、移動相談車両「法テラス号」を派遣し、弁護士が被災者の法律相談に応じていますね。

丸島 はい。今は地震による損害賠償や不動産関係などの相談が多いと聞きます。被災地のニーズは刻々と変化しており、今後、二重ローンなどの相談も増えると見込まれます。高齢化が進む地域だけに、弁護士と地域の福祉関係者との連携をどう深めるかが鍵を握ります。

伊藤 尽力されている弁護士の皆さまに感謝申し上げます。被災者の安心につながるよう、公明党も力強く後押ししていきます。

 

■犯罪被害者らを早期から継続支援

丸島 近年、法テラスは、被災者支援以外でも、旧統一協会の被害者への法律相談など新たな役割を次々担っています。

今年度からは養育費の不払い案件で、法テラスが立て替えた弁護士費用を、中学生以下の子どもを育てるひとり親の困窮世帯は免除を可能とする事業も始まりました。

伊藤 ひとり親世帯の負担軽減へ公明党が訴えていた政策で、子どもの貧困対策につながる大事な取り組みですね。

国重 今国会では犯罪被害者や遺族らが、早い段階から法テラスの弁護士による継続的な支援を受けられるようにする法改正も行われました。26年までに施行される予定で、法テラスの役割は一段と大きくなります。

丸島 法テラスの業務は質・量ともに増える中、これを担う職員数は限られます。業務のデジタル化などを進めつつ、地域との連携を深め、期待に応えたいと思います。

国重 公明党も現場の声を伺いながら、施策の裏付けとなる予算の確保も含めて全力で法テラスを応援する決意です。

 

まるしま・しゅんすけ

1951年生まれ。東京大学法学部を卒業後、78年に弁護士登録。日本弁護士連合会事務総長などの要職を務め、2017年10月に法テラス常務理事に就任。22年4月から現職。東京パブリック法律事務所の2代目所長として法テラスのスタッフ弁護士の養成にも尽力。