ヤングケアラー支援の強化へ
公明新聞に「伊藤たかえ」の記事が掲載されました。
今年度から3年間 政府の「集中期間」スタート
背景
「小6の6.5%」など実態判明
学業や健康への影響に懸念
ヤングケアラーについて政府は、昨年4月に中学生と高校生、今年4月には小学生を対象に、いずれも初めて実施した実態調査の結果を公表した。
昨年4月に発表されたのは、全国の公立中学校に通う2年生(回答者5558人)や全日制高校の2年生(同7407人)らを対象に、2020年12月~21年2月にかけてインターネットで行われた調査の結果である。
これによると、世話をする家族が「いる」と答えた割合は、中学2年生が5.7%で約17人に1人、全日制高校2年生は4.1%で約24人に1人だった。
世話をする家族がいると答えた生徒のうち、頻度が「ほぼ毎日」と答えたのは中学2年生で45.1%、全日制高校2年生は47.6%に上った。平日1日に世話に費やす時間は、中2が平均4.0時間、高2が同3.8時間。その上で「7時間以上」との回答が、それぞれ約1割あった。世話をする家族の内訳を複数回答で聞いたところ、「きょうだい」が中2で61.8%、高2で44.3%と最も多かった。また、世話をする家族がいる中高生の6割以上は相談経験がなかった。
今年1月には全国の小学校6年生を対象に郵送などで調査を実施、9759人の回答をまとめ4月に発表した。この調査では大学3年生にもインターネットで調査をし、9679人が回答している。
小学6年生では世話をする家族がいるのは631人で、約15人に1人に相当する6.5%だった。家族の内訳は複数回答で「きょうだい」が最多。平日1日に世話に費やす時間は「1~2時間未満」が27.4%と最も多いが、7.1%が「7時間以上」だった。世話をする家族がいる児童はいない児童よりも、欠席や遅刻、早退をすると答えた割合が高く、学業や健康への影響が懸念される。
また、世話をする児童の半数以上が「特にきつさは感じていない」と回答。家族の世話による制約も6割以上が「特にない」と答えている。この点について厚生労働省は、支援を受ける必要性を自覚していない児童も一定程度いるとみている。
家族にどのような「世話」をしているか聞いたところ、見守りが40.4%で最も多く、家事が35.2%で続いた。ただ、これは複数回答の結果であるため、1人でさまざまな世話を担っていることも考えられる。
大学3年生では、世話をする家族が「いる」あるいは「過去にいた」のは10.2%の987人。家族の内訳は複数回答で「母親」が最も多かった。平日1日に世話に費やす時間は「1時間以上3時間未満」が36.2%で最も多く、6.4%が「7時間以上」だった。
対策
社会的認知度高め早期発見へ
自治体の訪問事業など後押し
ヤングケアラーに関する実態調査と前後して政府は支援策の強化に乗り出し、2022年度から3年間を「集中取組期間」と定めた。4月に成立した22年度予算や昨年12月成立の21年度補正予算に関連費用が盛り込まれている。
柱の一つはヤングケアラーに関する認知度の向上だ。
中高生を対象にした実態調査では、8割以上がヤングケアラーという言葉を「聞いたことはない」と回答。国民一般の認知度も低いとみられており、政府は集中期間に積極的な広報を行い、認知度5割をめざす。ヤングケアラーを早期に発見して適切な支援につなげるためだ。
自治体に対する支援も行う。具体的には、ヤングケアラーに関する自治体単位の実態調査や関係機関の職員研修に対して国が財政支援する。加えて、自治体と関係機関、支援団体をつなぐ「ヤングケアラー・コーディネーター」の配置や、当事者同士が悩みや経験を共有し合うオンラインサロンの運営もサポート。このほか、ヤングケアラーへの訪問支援事業も行う。
さらに厚労省は今月14日、学校や自治体などが連携するためのマニュアルを公表した。主体となる機関や部署を決めコーディネーターを配置することを提言。ヤングケアラーの早期発見に向け、問題への理解を深めることも重要だとしている。
マニュアルは約80ページで、ヤングケアラーを取り巻く状況などに加え、現場での取り組み事例を紹介。家族が抱える課題は複雑になっているとして「切れ目のない支援が求められている」と説明している。
厚労省が4月に公表した小学校への調査結果によると、ヤングケアラーと思われる児童を「外部の支援につないでいない(学校内で対応している)」と答えた学校が42.7%に上った。その理由として「対応の仕方が分からない」などの回答があったため、マニュアルでは関係機関による連携改善の必要性を指摘している。
また、担当者が多いと全体方針がぶれる恐れがあり、素早い情報共有も難しくなることから、支援計画を立てて役割分担を明確にすべきと強調。子どもに自覚がない例もあり、本人や家族の考えを尊重しながらのサポートや、行政だけでなく地域全体で見守ることも求めた。
文部科学省や厚労省はヤングケアラーについて、日々のケアに多くの時間や労力を割くため、学業不振や不登校、就職機会の喪失など深刻な問題に発展しているケースがあるとみている。
ただヤングケアラーは、幼いころからそうした状態に置かれていることが多く、当事者自らが相談したり助けを求めることは少ないとされる。政府は学校などで助けを求めることの大切さを周知していく方針だ。
また、家族のために献身する行為自体は尊く、否定すべきものではないが、それが原因で自分の将来に希望が持てず苦しむようなことがあってはならない。このため政府は、一人一人が思い描く人生を歩めるよう寄り添う支援に努めるとしている。
誰一人取り残さない仕組みを
伊藤たかえ 参院議員
伊藤たかえ 参院議員
ヤングケアラーは、報道で取り上げられることも増えましたが、まだまだ知られていないのが現状です。まずは社会的認知度を高めることが重要です。
これについては、国の予算を活用して、各自治体での実態調査や福祉・介護・教育など関係機関への研修など具体的な取り組みを前に進める必要があると考えます。
昨年の中学・高校生への調査に続き、今年は小学生に対するヤングケアラーの実態調査が実施され、改めて深刻な実態が明らかになりました。調査が行われたことは評価しますが、支援の必要性を自認していない児童も一定数いるとみられ、対策が急がれます。
ヤングケアラーの問題は、私が昨年3月の参院予算委員会で取り上げ、省庁間の縦割りを越えた支援の“受け皿”構築を訴えました。この時の「省庁横断的に取り組む」との首相答弁が“追い風”となり、厚生労働・文部科学両省の合同プロジェクトチームが発足。22年度予算などには、ヤングケアラーの早期発見・把握や広報・啓発などの支援策が盛り込まれました。
公明党は国会議員と地方議員が連携してヤングケアラー対策に力を注いでいます。今後も地方議員と連携し、誰一人取り残さない仕組みを作っていきたいと考えており、子どもたちが希望あふれる人生を描けるよう着実に対策を前進させる決意です。