ヤングケアラー(介護で疲弊する子ども)支援、動き出す

公明新聞に「伊藤たかえ」の記事が掲載されました。

家事サポート、SNS相談など
具体策取りまとめ予算化
政府内でプロジェクトチーム設置を主導した山本博司・前厚労副大臣に聞く

病気の家族の介護や、幼いきょうだいの世話を担う18歳未満の子ども「ヤングケアラー」への支援が、来年度から大きく前進する。起点となったのは、厚生労働省と文部科学省による合同プロジェクトチーム(PT)がまとめた支援に関する報告書だ。国の動きと連動するように、全国の自治体も相次いで実態調査に乗り出し始めた。当時の厚労副大臣としてPT共同議長を務めた公明党の山本博司参院議員に聞いた。

山本博司 参院議員

――厚労・文科の合同PT設置の経緯は。

山本博司・前厚労副大臣 私の長女に重度の知的障がいがあり、その兄が幼い頃から面倒を見てくれていた。振り返れば、長男がヤングケアラーの当事者であった。さらに議員として障がい者福祉に取り組む中で、障がいや難病を抱える家族を支援する必要性を痛感していた。

昨年9月に厚労副大臣を拝命した後、公明新聞でヤングケアラーの特集が立て続けに掲載された。厚労省と文科省の省庁を超えた連携の必要性が指摘されており、私が主導して取り組みを進めようと誓った。

昨年末から厚労・文科両省の関係部局と調整に動き、両大臣の了解を得て、3月に合同PTの初会合をする方針が決まった。

国会質疑で首相から支援の意向引き出す

――PT設置を初めて公表したのは3月8日、参院予算委員会で公明党の伊藤孝江議員への答弁だった。

山本 伊藤議員の地元・神戸市では、20代女性が介護していた祖母を殺害する事件があり、伊藤議員は専門家にヒアリングを行うなどヤングケアラー支援を模索していた。

私がPT設置について述べた後、伊藤議員はさらに菅義偉首相(当時)にも質問。首相から「省庁横断のチームにおいて当事者に寄り添った支援につながるようしっかりと取り組んでいきたい」との言質を取った。首相がヤングケアラーを支援する意向を示した初の答弁だった。

――3月17日から始まったPTでは、どのような議論を行ったのか。

山本 2カ月間で計4回開催した。有識者や元当事者、支援者からのヒアリングと並行して、支援策の検討を行い、スピード感を持って報告書をまとめた。

印象に残っているのは、第2回会合で発表した、国として初となる実態調査の結果だ。中学生の約17人に1人、高校生の約24人に1人がヤングケアラーという数字は、多くのメディアが報じて反響を呼んだ。

その後、「骨太の方針」にもヤングケアラー支援が明記され、PTの報告書に沿った施策が来年度の概算要求に盛り込まれた。

――これから実施されるヤングケアラー支援策のポイントは。

山本 大きくは、①早期発見・把握②支援策の推進③社会的認知度の向上――の3本柱からなる。

早期発見・把握に向けては、自治体が行う実態調査や、福祉・医療・教育など関係機関の職員研修について国が財政支援を行う。さらに医療機関がヤングケアラーを発見し、自治体の支援窓口などにつなげた場合に診療報酬を加算する。

支援策の推進では、訪問型の家事・育児サポートや、当事者同士がSNS(会員制交流サイト)で悩みを共有できるオンラインサロンの設置・運営など、先進的取り組みを行う自治体を財政支援する。学校ではスクールソーシャルワーカーの配置を大幅拡充する。

3点目の認知度向上が重要なのは、本人が「自分はヤングケアラーかもしれない」と気付かなければ、誰かに相談しようと思えないからだ。来年度から3年間を「集中取組期間」として、中高生の認知度5割をめざした広報啓発を行う。

公明、地方議会で訴え
国の動きに連動、実態調査相次ぐ

国の主な支援策

――公明党、そして山本副大臣が果たした役割は。

山本 ヤングケアラーの課題に対応するためには縦割りを排した体制が必要だ。厚労省内だけでも、子ども家庭局はじめ、多くの部局が関わる。PT立ち上げの過程では一筋縄ではいかない部分もあった。しかし、私の立場から大臣以下に了解をいただき、さらに伊藤参院議員が首相から答弁を得たことで厚労・文科両省の協力体制ができた。

地方議会では、公明新聞の報道を受けて公明議員が取り上げ、実態調査に踏み切る自治体が相次いでいる。国と地方で一体となってヤングケアラー支援を進めているのが公明党だ。

――今後の決意を。

山本 ヤングケアラーは、制度の狭間にある複合的課題の典型だ。実はここに光を当てることで、子どもの貧困や認知症の家族など、周辺の問題群も浮かび上がってくる。

各自治体が実態調査をした上で、地域に合った支援体制をつくり上げることは非常に意義がある取り組みだ。全国の公明議員と連携しながら、施策を着実に前進させたい。

ヤングケアラー

本来、大人が担うと想定されるような家事や家族の世話などを日常的に行う18歳未満の子ども。核家族化や高齢化、共働き、ひとり親家庭の増加といった家族構成の変化が背景にある。過剰な負担によって、子どもの将来や健康に大きな影響を与えてしまう実態が近年明らかになっている。